‘弁護団からのお知らせ’

集団ADR申立ての和解案に対する東京電力の不当な拒否回答に抗議する共同声明

2018-12-14

1 集団申立てと和解案受諾について

⑴ 川俣町小綱木地区について

2018年(平成30年)年2月2日,原子力損害賠償紛争解決センター(以下「センター」という。)は,川俣町小綱木地区の住民566名が,東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)に対し,福島第一原子力発電所事故(以下「本件事故」という。)の慰謝料増額等を求めた和解仲介手続において,1人当たり20万円を賠償する和解案を提示した。

⑵ 福島市渡利地区について

2018年(平成30年)年6月7日,センターは,福島市渡利地区の住民3107名が,東京電力に対し,本件事故の慰謝料増額等を求めた和解仲介手続において,一部住民に対し,1人当たり10万円を賠償する和解案を提示した。

⑶ 相馬市玉野地区について

2018年(平成30年)年10月1日,センターは,相馬市玉野地区の住民419名が,東京電力に対し,本件事故の慰謝料増額等を求めた和解仲介手続において,本件事故当時19歳以上の玉野地区在住者に最大20万円を賠償する和解案を示した。

⑷ 和解案の評価と申立人側の受諾

いずれの和解案についても,提示した賠償額が低廉かつ対象範囲が狭く,被害実態に見合わないと評価せざるを得ない。しかし,中間指針追補が自主的避難等対象者に認めた一律の賠償額を超える精神的損害を認めている点では意義のあるものであった。

いずれの集団申立てについても,申立人らは,決して和解案で提示された慰謝料額が充分なものとは考えていない。もっとも,いずれの集団申立ても,長期間にわたって審理がなされ,センターが被害の実態を一部認定したこと,及び,一定範囲においてではあるが,一律の賠償額を認めたことを踏まえ,和解案を受諾する旨の回答を行った。

2 東京電力の不当拒否回答とそれへの批判

しかし,東京電力は,いずれの集団申立てにおいても,不当にも和解案を拒否した。
いずれの案件についても,東京電力の拒否理由は,和解案提示前からなされてきた主張の繰り返しである。

第三者機関であるセンターは,東京電力の主張も踏まえて,和解案を提示している。
東京電力による拒否回答は,申立人らが和解仲介手続において丁寧に明らかにしてきた被害実態を殊更軽視するものと言うほかない。
東京電力は,自社の独自の見解に固執して和解案を拒否しており,「和解仲介案の尊重」とは程遠い対応と言わざるを得ない。

3 東京電力は和解案を受諾すべきであること

和解案提示理由書で示された判断の基礎となる被害事実は,長い時間をかけた和解仲介手続で丁寧に認定されたものであり,その判断は相当程度の重みを持っていること及び和解金額が低廉であることから,少なくとも東京電力が和解案を拒否することはあってはならないことである。

しかし今回,東京電力は,原発事故の加害者でありながら,浪江町,飯舘村集団ADRに続き,今回,集団申立てにおいて,国の機関であるセンターの示した和解案を拒否するに至った。東京電力の拒否回答は,被害の切り捨てそのものであり,申立人ら被害者にとって,本件事故により苦しめられるとともに,その被害の救済を東京電力に拒否されるという耐え難い苦痛を与えるものである。

東京電力はいずれの案件の和解仲介手続期日においても,一律の賠償自体に応じられないという対応を示している。

この点,2018年(平成30年)12月4日に開催された参議院文教科学委員会において,参考人として出席した東京電力代表執行役副社長である守谷誠二氏は,「ADR手続は,個々の申立ての事情に基づき,簡易な手続により早期解決を目指す場であると認識している。他方で,一部には浪江町集団ADR申立てのように,申立人に共通する事情として主張する内容が,すでに中間指針で考慮されているものがある。そのような共通の事情を理由に,申立人全員に一律に賠償を認めている内容を認めているものがあることから,和解案に応じることは難しい。引き続きADRでは,被災者の個別の事情に基づき誠実に対応していきたい。」という趣旨の答弁をした。

しかしながら,和解仲介手続においては,「和解の仲介の申立てに係る当事者が多数である場合において…代表者を選定…することができる」(原子力損害賠償紛争審査会の組織等に関する政令第6条。同旨,センター和解仲介業務規程第6条)とされており,法律上,住民による集団ADR申立ても当然に想定されていることから,集団ADR申立てが和解仲介手続に馴染まないかのように東京電力が主張することは法の解釈を誤ったものと言わざるを得ない。

さらに,より重要な点は,申立人ら福島県に住む住民らが,なにゆえに集団で一律の請求をしているかという点にある。

本件事故により福島県内外の何百万という住民に被害が生じ,被害者数に比して住民側を支援する弁護士数は圧倒的に不足していることから,やむを得ず一定の範囲の住民に共通する被害のみを損害として賠償請求せざるを得ないからである。

かかる数多の被害者を発生させた東京電力には,住民らの置かれた窮状を無視して,集団での一律の請求には応じないと述べる権利はない。

東京電力の考え方は,原賠法第3条や中間指針等の考え方からも成立し得ないものである。
そもそも,本集団案件において提示された和解案は,慎重な審理を経て,それぞれの地区独自の事情から,仲介委員が申立人らに共通すると認められた最低限の損害を認めたものである。これを拒否することは,東京電力自身による和解案の尊重の誓いにも違背するものであることも明らかである。

4 これ以上の和解案拒否は許されないこと

今後,東京電力の拒否回答が続出する事態となれば,極論すればADRは直接請求と何ら変わりのない制度となり,センターの存在意義そのものがなくなり,被害の実態を直視することなく,原子力損害賠償紛争審査会の中間指針に縛られて身動きの取れない損害賠償実務が定着することになってしまうと危惧する。

以上から,3弁護団は,共同して,東京電力に対し,和解案を尊重し受諾をすることを強く求めるものである。

2018年(平成30年)12月14日

福島原発被害弁護団(小綱木地区担当)
原発被災者弁護団 (渡利地区担当)
ふくしま原発損害賠償弁護団 (玉野地区担当)

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