相馬市玉野地区集団ADR申立て打ち切り等に抗議する声明

2019-12-23

当弁護団で担当しておりました相馬市玉野地区集団ADRですが,東京電力ホールディングス株式会社が和解案を拒否し続けたことにより,2019年(令和元年)12月19日付で打ち切りとなりました。
当弁護団は,12月23日,このような東電の対応,原子力損害賠償紛争解決センターの打ち切り等の対応,原子力損害賠償紛争審査会の対応に抗議する声明を発出しました。

なお,和解案提示理由書,和解案受諾勧告書等につきましては,原子力損害賠償紛争解決センターホームページで,「和解に至らなかった事例」のうち,「和解案提示理由書等10(成立に至らなかった事例」として公表されています。

https://www.mext.go.jp/a_menu/genshi_baisho/jiko_baisho/detail/1406855_00003.htm


相馬市玉野地区集団ADR申立て打ち切り等に抗議する声明

1 相馬市玉野地区集団申立ての経緯

相馬市玉野地区(以下「玉野地区」という。)の住民419名は、東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)に対する福島第一原子力発電所事故(以下「本件事故」という。)の慰謝料増額等を求めて、2014年(平成26年)10月1日、原子力損害賠償紛争解決センター(以下、「センター」という。)に対し、和解仲介手続を申し立てた。センターは、4年の審理を経て、2018年(平成30年)10月1日、本件事故当時19歳以上の玉野地区在住者に最大20万円を賠償する和解案(以下、「本和解案」と言う。)を示した。しかし、東京電力が本和解案の受諾を拒否したため、センターは、2018年(平成30年)12月21日付和解案受諾勧告書、2019年(令和元年)11月7日付和解案受諾勧告書を提示した。
東京電力が本和解案の受諾を拒否する理由として述べた内容に対して、センターは、2度の和解案受諾勧告書において、「何ら合理的な和解案拒否理由を見出すことができない」と断罪した。しかしながら、東京電力は、その指摘に何ら答えないまま、受諾拒否の態度を変えなかったため、2019年(令和元年)12月19日、本和解仲介手続は打ち切られた。
4年にもわたり審理がなされ、被害の一定救済を認める和解案が出たにもかかわらず、本和解仲介手続の打ち切りによって、玉野地区住民の被害は何ら救済されず、救済されるためには、被害者が別途法的手続を取らなければならない。玉野地区住民がかかる状況に陥ったことは、被害の切り捨てそのものである。

2 東京電力の対応が著しく不当なものであること

申立人らは、本和解仲介手続において、4年にもわたって手続に真摯に対応し、丁寧に玉野地区の日常生活阻害の実態を明らかにしてきた。他方、東京電力は、手続当初から一貫して、一律賠償を内容とする和解案を受諾しないことを前提としており、センターからの受諾勧告にも応じないばかりか、合理的な理由もなく和解案を受諾しなかった。
このような東京電力の態度は、被害者の苦しみに何ら耳を傾けず、玉野地区住民の被害を殊更に軽視したものであって、もはや自らが誓約した「和解仲介案の尊重」に違背するどころか、加害者としての責任をかけらも感じていないものと断じざるを得ない。

3 ADR制度の問題点

本件和解仲介手続においては、和解案提示まで申立てから4年もの歳月を要した。和解案を提示したこと自体は評価するものであるが、審理にこれだけの長期間をかけたことは、申立人らに過度な負担を強いていると言わざるを得ず、早期解決を図るための和解仲介手続の機能不全が起きていることは指摘しなければならない。
しかも本件では、センターが2度もの和解案受諾勧告を出し、幾度も和解案の受諾を求めて説得を行っても、東京電力は応じなかった末、和解仲介手続の打ち切りという最悪の結果に至った。このことは、センターが東京電力に対して説得という手段しか持ち得ないという和解仲介手続の限界を露呈した。
東京電力が合理的な理由なく和解案を拒否することによって不利益を被るのは、もっぱら、一刻も早く救済が必要な被害者である。東京電力には和解案の不合理な拒否を許さない仕組みが必要であり、そのために、センターにおいても、単に手続を打ち切って終了とするのではなく、自らの制度設計について真摯に検討しなければならない。単に手続を終了とするだけでは、東京電力を利するだけであり、東京電力による不当な和解案拒否を黙認する結果となる。
この点に関し、申立人らは、本件和解仲介手続の結果の公表に際し、申立人個人の特定に至らない情報以外の全ての情報について、公表すべきであると主張した。しかし、センターは、総括委員会が定めた「和解仲介の結果の公表について」との方針を理由に、センター側が作成した書面(和解案提示理由書、和解案受諾勧告書)しか公表していない。原則として、和解仲介手続は非公表とされているが、センター総括委員会は、適当と認めるときには和解仲介手続の結果の概要を公表することができるとされている。東京電力には,原発事故に伴う責任から、非公表を求める資格はなく、センターが非公表とすべき理由もない。非公表とする正当な利益は申立人側のみにあるといえるところ、本件のように申立人側が公表を求めている場合、公表されるべきは当然であるが、センターは正当な理由も提示することなく公表していない。東京電力が本和解仲介手続においていかに不当な対応をしてきたかが知られなければ、本和解仲介手続の問題点はおよそ伝わらず、今後も、和解仲介手続における東京電力の不遜な対応を許すだけである。

4 原子力損害賠償紛争審査会による対応が必要であること

東京電力は、本和解仲介手続において、「中間指針等においては、最低限の損害を認めたものであるとの記載はなく、中間指針等が最低限の損害を認めたに過ぎないとする根拠が不明」などと主張し、中間指針等を大きく超える和解案には応じない姿勢を明らかにした。
当弁護団は、2019(平成31)年1月17日、中間指針等の策定者である原子力損害賠償紛争審査会(以下、「審査会」という。)に対し、東京電力による中間指針の解釈が誤っているために、センターによる和解仲介手続が円滑に進んでいないこと等を理由に、中間指針等の見直しを求める申し入れを行っているが、審査会は「現時点では直ちに中間指針等の見直しが必要な状況にない」として、未だ見直しを行っていない。
しかしながら、東京電力が中間指針等の理解を誤っている結果、センターの提示した和解案に応じず、その結果として玉野地区住民の申立ては打ち切られ、玉野地区住民の被害は切り捨てられたのである。未だ中間指針等について誤った解釈を公然と行う東京電力の対応を許すならば、審査会すら被害者の切り捨てに荷担していると言わざるを得ない。
中間指針に関する東京電力の理解が誤っている以上、中間指針の策定者である原子力損害賠償紛争審査会は、東京電力の身勝手極まりない解釈を許さず、中間指針の見直しを含めた必要な対応を直ちに実施して、和解仲介手続における東京電力の身勝手かつ杜撰な対応を現に改めさせる強い姿勢を示すべきである。

5 結論

以上より、申立人らは、
⑴ 東京電力に対し、不合理な理由で本和解案の受諾を拒否し続けたことについて強く抗議するとともに、
⑵ センターに対し、申立てから4年もの審理期間を費やしたこと及び公表等自らの取り得る方法について見直しを行わないままに手続を打ち切ったことについて抗議し、
⑶ 審査会に対し、中間指針等の見直しを含めた必要な対応を即座に実施しなかった結果、玉野地区住民の救済をしなかったことについて強く抗議する。
2019年(令和元年)12月23日
ふくしま原発損害賠償弁護団
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