伊達市月舘地区の方々の原子力損害賠償紛争解決センターへの申立等について

2015-10-06

2015年(平成27年)10月6日

報道機関 各位

伊達市月舘地区の方々の原子力損害賠償紛争解決センターへの申立等について

 ふくしま原発損害賠償弁護団
共同代表 弁護士 岩 渕   敬
共同代表 弁護士 齊 藤 正 俊
事務局長 弁護士 渡 邊 真 也
弁護団電話 024-922-2974

ふくしま原発損害賠償弁護団は,2011年(平成23年)11月30日に、福島県弁護士会各支部所属の弁護士が集まって,事業者・非事業者を問わず,被害にあった方々の完全賠償を実現するために設立された弁護団(現在の弁護士数は67名です)。

当弁護団では,2015年(平成27年)10月6日に、原子力損害賠償紛争解決センター県北支所へ和解仲介申立(集団申立)を行いました。

申立をするのは、伊達市月舘地区(但し、以下、旧月舘町における、月舘地区、糠田地区、上手渡地区、下手渡地区、及び御代田地区の一部の地域を意味するものとする)の417世帯、1277名の方々です。伊達市月舘地区は伊達市最南端に位置していて、東を計画的避難区域に指定された飯舘村、西を特定避難勧奨地点が指定された伊達市小国地区と接し、伊達市月舘地区内にも特定避難勧奨地点が存在しています。伊達市月舘地区もやはり東京電力福島第一原子力発電所事故により、放射性物質により高濃度に汚染された結果、若年層が地区をでてしまう、山や川の恵みを受けられなくなるなど、事故前と生活は一変しました。

このような状況に鑑み、上記地区の約6割超の世帯の方々が原子力損害賠償紛争解決センターに対し、事故後、月10万円の精神的損害の賠償を求め、ADR申立をすることとしました。

以上


 

【伊達市月舘町集団申立て概要】

ふくしま原発損害賠償弁護団

第1 申立ての趣旨

申立人1人あたり,平成23年3月11日から和解成立に至るまで,月10万円の精神的損害の賠償請求。

第2 申立ての理由

1 伊達市月舘町(以下「旧月舘町」とする。)とは, 福島県伊達郡にあった町である。平成18年1月1日,同じ伊達郡にあった伊達町,梁川町,保原町,霊山町と合併し,伊達市となった。

旧月舘町はいわゆる中山間地域であり,中心を阿武隈川の支流である広瀬川が流れている。地域のほとんどが山々に囲まれており,その生活風景の中に常に山々が存在する自然豊かな地域である。町の総面積は43.63㎢で,そのうち23.47㎢(53.8%)が山林,田畑は9.31㎢(21.4%)であり,データからもその地域特性が伺われる。なお,除染が済んだ宅地は1.21㎢で,町の総面積の2.8%にすぎない。

その人口は,旧月舘町全体で3666人,月舘地区,糠田地区,上手渡地区,下手渡地区だけでは1906人となっている(平成27年3月末現在)。今回の申立人数は約1200名であり,申立人ら居住地区(御代田地区を除く)の約6割超にあたる人数の申立となっている。

2 旧月舘町の放射能汚染の状況について

旧月舘町は,伊達市の最南端に位置しており,東側を計画的避難区域に指定され全村避難した飯舘村に,西側を特定避難勧奨地点が複数指定された霊山町下小国地区,上小国地区に接している。また,月舘地区内部の相葭地区にも特定避難勧奨地点が指定されている。

図のように,旧月舘町(青枠で囲んだ部分)にはその周辺及び内部に同地点が複数存在し,本申立人らの居住区域から約3~4㎞というごく身近な場所から囲むように点在していたのである。

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3 申立人らの将来の健康に関する不安

(1)申立人らの居住地区の除染の実施状況

報道などによれば,現在のところ伊達市による除染が行われたのは,宅地や住宅,学校などの公共施設及び道路の一部にとどまっており,旧月舘町の大部分を占める山林や農地,農道や林道の除染には未だ着手されていない。

(2)除染後も放射能汚染が続いている

除染が行われた住宅なども,十分に線量が下がっていない地点が多く残っており除染の効果は不十分である。

4 従来の生活が営めなくなったことによる不安や苦痛

(1)生業を続けられなくなったこと

農作物から放射性物質の検出を受けて,農作物の一部は,現在も出荷制限がなされている状況であり,出荷制限がなされていない,又は,出荷制限の解除がなされた農作物についても,風評被害が深刻である。

(2)家庭菜園ができなくなったこと

作物から放射性物質が検出され,家庭菜園は,事実上不可能となり,生きがいを失った住民も多い。

(3)キノコ・山菜も採れなくなったこと

キノコ類や山菜からは放射性物質が検出され,現在においても出荷制限がなされており,キノコ採りや山菜採りは自粛せざるを得ない状況である。

(4)魚が採れなくなったこと

政府からの指示で,阿武隈川漁業協同組合では,漁業権漁場全域における全ての魚種(フナ・ハヤ・ヤマメ・コイ・イワナ・ウナギなど)について漁業を休止した。

(5)害獣被害が増加したこと

イノシシ肉から基準値を超える放射性物質が検出されたこともあって,現在,狩猟離れが進み,田畑にイノシシなどが頻繁に出没するようになり,農作物の被害が深刻化している。

(6)水を安心して口にできなくなったこと

布川水源(月舘簡易専用水道)の水道水からは,乳児に与える基準値を上回る放射性ヨウ素が検出された。

(7)多くの世帯が避難をして,地域生活に支障が生じたこと

多くの世帯とりわけ子どもを有する世帯が避難をしてしまい,申立人ら居住地区の世代構成が崩れ,高齢者層の割合が著しく増加し,地区で行われていた地域の恒例行事(祭りなど)が一時期行われなくなるなど,地域生活に支障が生じている。

(8)子どもや孫が遊びに来なくなったこと

申立人らの子どもや孫が遊びに来なくなり,地区全体の活気が損なわれ,地域の恒例行事の存続自体も危ぶまれたこともある。

(9)生活環境が悪化していること

下手度地区には,収容人数500人規模の除染作業員用の宿舎が建設されている。日常生活や地域行事の中で除染作業員らと顔を合わせることに不安を覚える住民は多い。

(10)生活における不便が生じてしまったこと

ア 日常的に,特定避難勧奨地点に指定された高線量地域との関わりを余儀なくされていること

(ア)旧月舘町内には,個人が営む小規模なクリニックしか存在せず,検査,入院等を要する医療(医療法上の二次医療に相当するもの)を受けるには,必然的に特定避難勧奨地点に指定された地域を通行しなければならない。

(イ)旧月舘町内には高等学校が存在しないため,町内の高校生は,日常的に特定避難勧奨地点に指定された地区を通行しなければならない。

(ウ)申立人らのうち就業している者の勤務先は,福島市や伊達市中心部が多く,通勤者も,日常的に特定避難勧奨地点に指定された地区を通行しなければならない。

(エ)旧月舘町内にはスーパーマーケットが存在せず,スーパーマーケットを利用するためには,特定避難勧奨地点に指定された地域を通行せざるを得ない。

(オ)以上のとおり申立人らは,日常生活のあらゆる面において,福島市や伊達市中心部と密接に関わっており,日常的に,特定避難勧奨地点に指定された地区の利用や,通行を余儀なくされている。

イ 特定避難勧奨地点を含む地域と同様の制約を強いられていること

申立人らの居住する地区は,特定避難勧奨地点を多数有する霊山町上小国及び同町下小国や,川俣町,飯舘村といった高線量地域に囲まれており,特に霊山町上小国地区とは,1つの山の尾根を挟んで隣り合っており,申立人らの中には,糠田字長畑に居住する者もおり,同地区は上小国地区の住宅から1キロメートルも離れていない場所である。

上記の位置関係により,申立人らは特定避難勧奨地点を含む地域と同様に,常に放射線を意識しながらの生活を強いられることになり,多大な精神的苦痛が生じている。

ウ イノシシによる害獣が急増していること

前述したように,原発事故後,野生のイノシシが急激に増加し,民家や畑を荒らされる害獣被害が増加したものである。

エ 地域間の交流が立消えとなっていること

旧月舘町相葭地区の一部が特定避難勧奨地点に指定され,同地区内の住民らの多くが避難してしまったため,申立人らとの交流がなくなってしまい,それまで相葭地区との間で形成してきた日常的,文化的な繋がりが立ち消えになってしまった。

5 不当な差別・偏見による不安や苦痛

(1)家族の将来や結婚に対する不安・苦痛

前述のとおり,旧月舘町はその周辺を高線量地区に挟まれている状況であり,申立人らは将来我が子の結婚が目前に迫った際に相手の親族に反対されるのではないかという不安を拭えない。

(2)農作物に対する不当な差別・偏見

放射線に汚染された地区に囲まれた地区という旧月舘町のイメージによる偏見や差別は,そこで採れた農産物にも及んでいる。

6 精神的苦痛に対する慰謝料

以上のとおり,本件原発事故により申立人らが強いられた精神的苦痛は甚大である。

したがって,申立人らには最低でも,月額10万円の慰謝料が支払われるべきである。

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