東京電力への意見表明

2012-03-02

ふくしま原発損害賠償弁護団では、2012年3月1日(木)、東京電力が「自主的避難者」のうち妊婦と子どもに対し、20万円の増額をしたことに関し、弁護団として意見を出しました。
対象区域からの避難者と、「自主的避難」をした人との間での費用賠償に差を設けるべきではない、また「自主的避難者」と滞在者との間で、その精神的苦痛にないという立場から、意見表明をしました。

要旨は、以下のとおりです。

(1)東京電力に対し、

1,避難区域内の避難者と同様に、「自主的避難者」の避難費用や生活費増加等についての実額賠償を行うこと

2,地域内滞在者については、避難したか否かで区別せず、「自主的避難者」を下回ることのない賠償を行うこと

(2)原子力損害賠償紛争審査会に対し、上記の点を考慮した中間指針追補の見直しをすること

(3)原子力損害賠償紛争解決センターにおいても、現時点においては「自主的避難者」に対し、避難費用と生活費増加についての実額賠償を行うこと

詳細については以下の通りです。


2012(平成24)年3月1日

東京電力の「自主的避難者」に対する賠償額の変更に関する意見

ふくしま原発損害賠償弁護団

共同代表 弁護士  岩 渕   敬
共同代表 弁護士  齊 藤 正 俊

 

1 東京電力は、2012年(平成24年)2月28日、いわゆる「自主的避難者」のうち、実際に避難をした妊婦と子どもに対し、中間指針追補(*2011年(平成23年)12月6日、原子力損害賠償紛争審査会が公表した「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針追補(自主的避難等に係る損害について)」)が示した賠償額(8万円、妊婦と子どもに対しては40万円)に20万円を増加賠償することを発表しました(以下、「本件発表」といいます)。

2 しかし、「自主的避難者」は、原発事故によって居住していた地域が汚染され、かつ、汚染状況や、放射線被ばくによる健康影響についての情報開示が不十分な中で、このまま地域に住み続けることに重大な不安を感じ、避難したものであって、避難を余儀なくされたという点では、避難地域等からの避難者と何ら変わりがないものです。
現に、福島県内外の各所では、局所的に放射線量が高い地点(ホットスポット)が観測され、追加的に「特定避難勧奨地点」等の指定も行われています。そのような中、居住者が、自分及び家族等への長期的な被ばくによる健康影響を懸念して避難することには合理性があると考えられます。異なるのは、避難が政府の指示等によるものかどうかという点だけです。避難指示地域からの避難者については、避難費用や生活費増加の実額賠償を行いながら、「自主的避難者」には、避難費用や生活費増加の実額賠償をせず、1回限りの定額の賠償で終了とされることは許されません。

3 これに加え、本件発表は、事故以前よりも明らかに高い放射線量が観測されている生活環境の中で生活し続けなければならない地域内滞在者については、何らの増額も検討していません。地域内滞在者も、長期間にわたる放射線被ばくの健康影響についての不安を抱えながら生活しており、特に、妊婦や子どもを持つ家庭では、今なお様々な生活上の支障(子どもを屋外で遊ばせることができない、地域で産出された食品を避ける、外出は最小限にし、マスクを着用する、外出時に線量計を携帯する、屋外に洗濯物や布団を干さない…等々)が継続しています。このような生活を強いられることによる出費の増加や生活上の支障、また将来への不安は、「自主避難者」と比較しても、決して少ないものではありません。

4 以上から当弁護団は、

(1)東京電力に対し、

1,避難区域内の避難者と同様に、「自主的避難者」の避難費用や生活費増加等についての実額賠償を行うこと

2,地域内滞在者については、避難したか否かで区別せず、「自主的避難者」を下回ることのない賠償を行うこと

(2)原子力損害賠償紛争審査会に対し、上記の点を考慮した中間指針追補の見直しをすること

(3)原子力損害賠償紛争解決センターにおいても、現時点においては「自主的避難者」に対し、避難費用と生活費増加についての実額賠償を行うことを強く求めるものです。

以 上

Copyright(c) 2012 ふくしま原発損害賠償弁護団 All Rights Reserved./平成23年度社会福祉振興助成事業